20041010


 ふつうに11時15分に起床。
 つーかこうやって日常の描写をえんえん続けていて思うんだが、日常ってのはほんとに日常だ。とにかく同じことの繰り返し。なんつーか、エロゲよくやるわ。なんにも起きねえんだよ日常っつーのは。毎日同じ書き出し。毎日同じ展開。キーボード叩くこと自体が快楽だから別にかまやしないし、少なくともテキスト書いてる限り「飽きる」ということはほぼありえないからやってられるようなものの。なんつーか、Beeさんの日記がなんとなく好きで毎日つい読んでしまうのは、俺にはできないことをやってるってのもあるかもしれない。あと、うりゃぼすん。

 てな内輪の話はともかく。
 今日は雨は降っていない。昨日の天気予報でも今日は晴れだった。今日こそは。今日こそは新しいカバン使えるっ。と思って゛昨日のカバンから今日のカバンに中身は詰め替え。素晴らしい。このルーズな帆布の雰囲気。新品の状態でさえここまでルーズなんだから、使い古した日にはきっとボロ布である。素晴らしい。俺はそういうのが大好きだ。
 以前に東急ハンズで1000円かなんかで、そういう帆布でカーキ色のショルダーバッグを買ったのだけれど、それはまゆみさんに上げてしまった。俺が好きだったものをまゆみさんが使ってくれるのはそれはそれで嬉しいのでかまわないのだが、やはり俺は、あのてきとーなズダ袋的雰囲気のカバンをかなり愛していたらしい。カバンの売場を見るたびに、その愛したカバンの面影を求めて彷徨ってしまうのだ。頭悪いっぽいね。
 そんでようやく巡り合ったネクスト頭陀袋。6000円という価格は痛かったが、まあなにはともあれフェールラーベン。ちなみにメイドインチャイナ。近頃縫製製品は、ほとんどすべてといっていいほどメイドインチャイナなわけだが、今日一緒に夜勤をやったTさんの話によると、なんでも中国製品は安価なわりに質がいいのだとか。民族性の問題ですかねえとかゆってた。知人の衣料品店の店長さんの話らしい。

 ま、そんなわけで体になじまないカバンなど意気揚々と背負っていざ出勤。
 と思って自転車の鍵を取り出そうとする。
 ……ヤバい。
 定位置に、ない。
 ちなみに時間もけっこうない。
 衣類のボケットやら以前のカバンやらミニマム九龍城と化しているパソコンデスクの周囲やら必死で探すが、ない。
 三日連続、店に言い訳の電話。
 「はいありがとうございますローソン○○店でございます」
 「えーと。MK2ですが」
 「また遅刻ですか?」
 「いえあの遅刻は遅刻なのですがその、そこには理由というものがありまして」
 「聞くだけ聞きましょう。どうしましたか」
 「家の鍵と自転車の鍵、見当たらないんですけど……」
 「はあ…」
 「あのですね。あと5分探してだめだったら諦めてバスで行きます。最大でも13時よりは遅くならないと思う」
 「なるべく早く…お願いします…」
 とはいうものの、そう簡単に見つかるはずない。諦めて合鍵使って行こうかと思ったわけだが。
 あれ。そういやケータイって入れたっけ?
 カバンをまさぐってみる。ケータイ用と決めたポケットがあるので。よし。ケータイあった。ついでに鍵もあった。
 はい?
 あ、ああ…。あーさっき、入れた…のね。自分で。
 まあ、あれだよね。いまさらわかっても遅刻は遅刻、なんだけどね…。

 店に着いてとりあえず謝る。謝ってばかりだ俺の日常。
 ともあれ、弁当の発注の修正。ついでに今日の分の弁当の発注。弁当や飲料などが入っているオープンケースと呼ばれる冷蔵庫のフェースアップ(要するにきれいに陳列しなおすこと)。売場の最低限のメンテだけやってから、すぐにレジ精算。月曜から土曜はすでに何度か登場している高橋さんがやってくれているのだが、日曜だけは彼女は休み。自分でやるしかねえ。
 大したトラブルもなく終了。
 しかし。今日はシフトが非常にキツい。台風一過の日曜日。うちの立地では稼ぎどきもいいところ。そんな日に、昼から夜までずーっと二人しかいない。売場の維持まで手が回るかどうか。

 午後22時まで話は飛ぶ。
 いやもう、それまでもいろいろあったんだけど、要するにもう、ただたくさん客が来てものすごく忙しくて大変だっただけだから。昼から22時まで一緒にシフトに入っていた太田さんのセリフがすべてを物語っている。
 「今日は私、心のスイッチ切ってましたから」
 じゃなきゃ耐えられませんでした、と彼は続けた。ミスドで一日に3000個ドーナツを揚げたときと同じくらいのプレッシャーがあったそうだ。
 ただあれだ。これだけはぜひ記しておきたい。今日はおでんがよく売れた。気が狂ったようによく売れた。そして具の発注数は少なくかった。現在、そのへんの発注を担当している高橋さんが、正直ヘタなのだ。いーかげん慣れてもいいころだと思うのだが、売れるときは150個、売れないときは30個という極端な増減をするおでんの売れかたにカンが追いつかないらしく、売れる量に対して具が多かったり少なかったりをけっこう繰り返す。よりによって売れる今日に、少ない数をとってしまったわけだ。
 つかあれよ。コンビニおでんにはんぺんないのってヤバいから。あれが「食べたい」という気を起こさせるための重要な視覚上のポイントなんだから。あとはつゆの透明度な。つゆの表面に油とかカスとか浮いてなくて透明度の高い店は本気でおでん作ってる店です。きっとつゆもおいしいはず。

 22時から、休憩がてらIRCにつないでグチ。
 グチ終了して少しはやる気が出たので、売場のメンテへ。特に菓子がガタガタ。カップ麺も相当にヤバかったんだが、売場に対して相対的に占める面積が少ないんで、とりあえず後回し。菓子は広い面積を占めてるうえにまんべんなくガタガタにされてるもんで、まず整えておかないと。
 
 「あのー、すみません。やってしまいました」
 品出しを初めて数分。20時間労働という苦行に挑む俺を助けるため、0時まで残ってくれることになった太田さんが、消え入りそうな声をかける。
 「どーしました?」
 「これです」
 差し出された太田さんの手には、カルボナーラのパスタ。
 「よもや…」
 「はい。面目ないです。入れ忘れです」
 「ぐはー」
 「本当に申し訳ないです…」
 ミスドで店長経験のある太田さんにとって「入れ忘れ」がどういう意味を持つかは明白だ。特にパスタとかの主食系のものの場合、クレームは絶対に避けられない。そしてどこからみても確実こちらが悪い。
 まあ、自分がしでかしたことの意味がわかっている人にあまりくどくど文句を言ってもしかたない。俺だってやらないわけではないんだし。
 「ま、あれです。電話を待ちましょう。こんな遅い時間だったらきっと近所ですよ」
 「私が届けに行きましょうか」
 「いえ。たとえ太田さんが俺よりうまく対処できるとしても、これは店長の仕事でしょう。そのへん、太田さんよくわかってると思いますよ」
 「まあ、それはそうなんですが…」
 「気にしても始まりません。以後やらなきゃいいだけのことです。とりあえず激しく忙しいレジで気を紛らわせてください」
 「わかりました」
 あらゆる意味でA型の権化のような彼であるから、その落ち込みようは気の毒なほどだったが、慰めるほどのこともない。ミスやらかしたのはまちがいなく本人なんだし。
 待つこと数分。来た。電話だ。
 太田さんがバツ悪そうな顔でこちらを見る。
 電話に出ると、やはり入れ忘れの客。
 住んでる場所はすぐ近所マンション。印象も悪くない。激怒してるって感じはまったくしない。
 安パイだ。問題ない。
 電話を切ってからレジ打ってる太田さんにその旨告げる。
 「問題なさそうです。すぐ近所ですし。あ、からあげクンをお詫びとしてつけるんで、廃棄扱いにしておいてください」
 「ご迷惑おかけします」
 「いえいえ。では行ってまいります」

 玄関で応対に出たのは、けっこう品のよさそーな老婦人。やはりお怒りというわけではなく、むしろ23時過ぎなんていう遅い時間にわざわざ届けに来てくれて恐縮です、という感じ。とはいえ相手が穏やかだろうとコワモテの危険度の高い人であろうと、こちらのミスと客にかけた迷惑には変わりない。その旨を可能な限り正直に告げてお詫びしまくる。
 怒ってないということであれば「おまけ」をつけることは意味がある。
 向こうは固辞したが、別にひとり暮らしで食い切れないという感じでもなかったので「こちらの気持ちの問題です」戦法で押し切ってもらってもらう。
 人間必ずミスはするもので、こうしたクレームは必ず発生する。ま、対処ひとつだよね。

 店に戻ってから、さすがにちょいと疲れてきたなーと感じたので、売場を最低限カッコつく程度にまとめてから仮眠。
 0時15分起床。
 太田さんには上がってもらう。
 あとは通常の夜勤の仕事。70万円の売上に見合った大量の納品が来て、それを黙々とかたづける。今日の夜勤の相手は昨日の日記にも登場したTさん。ほとんど怯えるような勢いで仕事をかたづけている。あー、俺ラク。
 退勤時刻の6時間際でちょいと仕事が残ってしまい、バタバタとしたが、まず問題なく仕事終了。
 俺はまだほとんど発注が手つかずだったので、裏に座り込んでDOTと呼ばれる発注端末をいじっていた。Tさんが自分の仕事を終えて退勤。なぜかそこからパソコン話に。というか、やや古めのマニア話って感じ。
 Tさんによる聞き取りにくいマシンガントークが続く。
 「さきほど納品かたづけていて思ったのですが、最近ではDVD−Rも安くなったなあと。私なんか出始めに買ったのですが、書き込みは遅い、メディアは高いでこんなものを購入した自分が馬鹿らしく思えるほどのものでしたよ」
 「あー。俺は最近クラナドのためにかろうじてRではなくて読み取り専用のは買ったんですけど、まだ取り付けてないなー」
 「だから私はまだ自宅ではMOです」
 「MO!」
 またなんかえらい懐かしい単語を聞いたような気がしてついまともに反応してしまう。これが悪かった。しゃべりたがる相手にはまともに反応しちゃいけないってのに。
 「そうなんですよねえ。容量の問題があるとはいえ、あれはなかなか便利なメディアだと思うんですけれどもねえ。いまとなっては大容量化が進んで云々」
 途中からぜんぜん話の内容は覚えてない。
 「というわけで、キューハチのころはコンベンショナルメモリを空けるのにあれだけ苦労していたのが嘘のようです」
 え。いつのまに話がそんなところに。
 まあ話題としては理解できそーだし乗ってあげようかと思ったら、いきなり話はX68000、いわゆる「ペケロッパ」のほうに流れていって俺にはまた理解不能に。
 結局彼は30分ほども語り倒した挙句に「また機会があればぜひこんな会話を」と言い残して帰ってしまった。それ会話じゃねえよ。
 あんた昨日、俺に社会人失格呼ばわりされといて、よくそれだけしゃべれるね。
 ま、いいや。これでようやく発注に専念できる。
 ……とはいかないのが店長の宿命というやつで。
 「あのー店長。タバコの発注なんスけどー」
 6時から出勤の高橋さんだ。またうるせえのが質問しに来たなあ…。
 「このあいだ在庫が多すぎるって言われたじゃないですかぁ。それでーこのあいだの発注けっこうがんばって減らしてみたんですけど」
 「多いよ。まだ。かなり。この在庫スペースにきっちり納まるくらいって言ったじゃん」
 「えーそれ無理なんすけど」
 「無理じゃねえよ。現に俺やってたんじゃんよ。いい? このへんのたとえばJPSなんかさ、要するに”うちにはこんなタバコまであるんですよ”っていう意思表示のために置いてるんだって言ったじゃない? だったら残り3個とかになってからでも発注は間に合うわけよ」
 「えーと…」
 自分が納得するまで話を進められない高橋さんは、そこでじっくり考え出す。
 「なんかあたしひょっとしてカン違いしてたみたいなんすけど、カートンとかで註文されたときにないって言われるとガッカリするじゃないですか。それやっちゃいけないかなー、とか思ってちゃんとカートンで在庫持ってたんすけど」
 「あのさ。よーく考えてみ? うちに来店する客、一日に1300人くらい。そのうち何人がJPSカートンで欲しがる?」
 「一人もいないっス」
 「いや、即答されてもなあ…。まあ、そのとーりだよな。そんなもん、月に一回売れりゃいいほうじゃない。カートンでは」
 「はい」
 「だとしたらだ。月に3万人以上来る客のなかで、たった一人のために高橋さんはカートンで在庫持ち続けるっての? 3万人のうちの一人のために店はできないのよ。在庫増やすとそれだけ利益は減る。そのためにタバコで在庫持つんだったら、たとえば牛乳とかパンで持ちたいわけ。だからタバコの在庫はこのスペースで納まる分だけって決めてるのよ。わかる? 全員の希望には応えられない。だからより多くの人の期待に応えるために、与えられた制限のなかでベストの解答を求めるの。そしてその解答のなかにたとえばJPSカートンってのは入ってない」
 「わかりました」
 「ま、おでんにしてもかなり欠品してるみたいなんだけどさ」
 「あ、はー。すいません」
 「3万人のうちの一人の失望を気づかうくらいだったら、もっと高い確率で客を失望させるロールキャベツの欠品のほうがはるかにヤバいじゃん いい? 発注ってのは結局、わからないはずの未来を予知する作業なんだ。たとえば昨日台風だったじゃん。んでそのいちばんひでェ時間帯にわざわざ高橋さんは帰ったわけなんだけど」
 「あれはヤバかったです。店出て2メートルで後悔しました」
 なんだその具体的な数字は。
 「その台風の翌日、休みだったとするじゃん。天気予報では今日晴れだったよね。でも実際には天気はそんなによくなかったじゃない。台風のあとの連休の初日、さー家族でお出かけだって、まあふつうは考えるよね」
 「はい。それは」
 「でも裏切られた。あんまいい天気じゃない。でもお出かけしたいって気持ちは残るし、そもそも子供は出かけたがってうるさい。そこでどうするか。じゃあ近所ビデオ屋かブックオフにでも散歩がてら行って子供になんか買ってやるかってことになるわけよ」
 「はあ」
 「実際昨日、ブックオフ馬鹿みたいに混んでたって大木くんが言ってたんだけど。でもほら、そうすると帰りがけにコンビニに寄るじゃない。もともと目的なんかなくてだらだら出かけただけなんだから。でも財布のヒモは緩んでる。そして意外に涼しい。そこでどうなるか」
 「…あったかいもの買うんですかね」
 「そう。そういうこと。この曇り空の下、外で中華まん食いたいって気分にはならない。それでおでんなのよ。だから昨日おでんが馬鹿みたいに売れて、欠品も多数発生したの」
 「あー、なるほどー」
 「発注っつーのはすべてそういうこと。たとえばタバコの1ミリの新商品が出るとするよね。あきらかにセーラムピアニシモの客を分捕ることを狙いとした、たとえばバージニアロゼみたいなやつ」
 「はい」
 「だとしたらこう考える。ピアニシモを買う人間は、どうしてピアニシモを買うのか。どうしてだと思う?」
 「さあ…軽いからですかね」
 「それだったらネクストでもバンテージでもなんでもいいことになるじゃん。若い女の人にバンテージはねえだろう。まず100Sであることが条件じゃん。あと細いこと」
 「あそーか。そうですよね」
 「結局ピアニシモ買ってる中心層って若い女性じゃん。それもタバコを吸うっていうスタイルのために吸ってる人。スタイルが目的なんだから、ニオイけむり少ないってなキャッチコピーに引かれるわけだ。同時にスタイルである以上、ピアニシモの対抗馬のタバコは、客がピアニシモに求めてる部分に関して、ピアニシモより優れてないと、欲しいと思ってもらえないわけだ。つまり端的にいってオシャレかどうかってこと」
 「ロゼは…どうなんですかね」
 「売り込んでるにもかかわらず売れてないってのは、客の求めてるスタイルってやつは、あれじゃなかったんだろ。そしてその、これはハズレ、って感じを記憶しとくの。次に類似の商品が出たときのために。……俺の言ってること難しい?」
 「かなり。プレッシャーです」
 「そこがおもしろいんじゃん。客の需要のひとつ先を読む。んで、これはイケそうと思ったら、集中的に売り込んでタバコ全体に関する店の評価を上げる。んで、タバコに対する客の信用を得る。さらにタバコが売れる。その過程がおもしろいんじゃんよ」
 延々そんな話をしてるうちに1時間経過。
 自分の発注をかたづけ終わったころには、もう8時を完全に過ぎていた。
 ひぃ。今日17時からまた仕事なのに…。

 仕事終わって店の外に出る。
 まゆみさんにでんわ。
 「なんか欲しいものあるー?」
 「えーとね。うーんと。なんにもない」
 「あ、そーですか…」
 どうやら寝ていたもよう。そらーねえ。
 電話を切って自転車にまたがる。
 しっかし今日の空模様はこれ、どうなんだろうなあ。予報じゃあ晴れだって言ってたけど、これ、どう見たって純正モノホンの曇天。
 自転車にまたがって走り始めて数分で、いきなり雨。しかも大粒。
 またかよ…。
 なんかこう、これは新しいカバンを使うなっつー神とかそんなもんからの警告なんだろうか。

 帰りがけにセブンイレブンに寄る。まゆみさんの朝飯っつーか晩飯っつーかなんだかよくわからんメシを買う。あと最近のまゆみさんお気に入りのリプトンのグレープティー。
 いーかげん自転車もそろそろメンテしなきゃいかんなー、と若干漕ぎの重くなったペダルを踏みながら思う。ここんとこずっと雨だったしまともに注油してねえし。
 そーいやこのあいだの休みは天気よかったな、と思う。
 確かにあのテキストの書きかたはそっけなかったかもなあ。そう。ああやって二人でのんびり休日を過ごすことなんてあんまりない。実際とても楽しく、俺は幸福だったと思うのだ。この日記は、完全に「将来の自分たちが過去を振り返ったときに読む」ことを想定して書いてるわけなんだけど、だとしたら、その「幸福」の部分について触れないのは片手落ちかもなあ、とか思う。

 「いつの日も、十月の晴れた空のようでありますように」

 そんなフレーズが急に浮かんだ。
 俺もまゆみさんも、天から降ってくるような、空気中にあたりまえのように含有されているような幸福を信じない。それは自分たちが幸福であろうと主体的に努力するその努力のなかにしか存在しない。努力の結果の到達点は停滞で、そこには退屈しかないから。あたりまえのように存在する幸福を信じられない以上、努力は続けるしかないから。
 いま現在が幸福であると俺はよく言うけれど、それは過去に「この世界のどこかに幸福というものはあるかもしれないが、それは俺には関係のないものだ。だからその奇跡がこの世界のどこかに存在することを俺は知っていればいい。それを信じることで俺は美しい夢を見ることができる」と思っていた過去とどちらがより幸福だろうか。
 美しい夢は強い酩酊感をもたらす。それは純粋な陶酔であるだけに強烈だ。しかし根拠はない。酩酊感は生活を保証しない。
 現実にここにある幸福は、それが実在するというだけで「失われる可能性」を考慮するほかなくなる。それを人は「守り」と呼ぶのだろう。守りは感性の鈍麻をもたらし、感性が鈍麻すれば人はそれだけ感じる能力を失う。それはかつてその人が「幸福」と呼んでいたものも例外ではない。守るべきはずのものを簡単に人は見失うことができる。

 だから。とまゆみさんは言うのだ。
 楽しければ、それでいい。
 その楽しさを維持するための努力はしよう。結局人間いつかは死ぬ。死ぬときまで楽しんでいたもの勝ちだ、と。
 だから俺とまゆみさんは遊びつづける。遊びがそのまま仕事であるような選択をする。コンビニの仕事もまた遊びだ。よりシビアでやりがいのあるゲーム。この世界は遊び場だ。無数の人々の生活から遊離して、俺とまゆみさんは遊びつづける。

 けっこう量書いてんなあ。結局昔のペースに戻ってるわ。

 あとサンフェイスさんの日記を読んで、なんだか痛烈に話したくなった。あの人いい。やっぱいい。てなわけで、近々会いませんかー? なんだか無性に話したいですよ。

 ところでまゆみさんは寝たまんまです。起きてきません。
 カレーライス買ってきたんだけどなあ。



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