20050524


 「信じる」という行為はなにも期待しない。
 俺はそれを美しいと感じる。
 俺が俺自身に対して「信じる」という言葉を使うとき、その言葉の背後には「信じない」がある。あるものを俺が信じるとき、俺はその「もの」の実在の有無を問わない。それはある意味で絶対の逃避を意味する。それが逃避でなく本当に自分にとっての真実になりうることは、たぶん永久にない。「信じたいから現実に目をつむり、俺があると決めたからそれは存在する。そしてその価値を俺は疑わない」という状態を俺は不純だと感じる。それを承知でいながら、頑迷な俺の精神はその領域から絶対に出ようとはしない。出ることを狂おしいほど願っていたときですら、俺は出られなかった。
 もし人が本当に「信じる」のであれば、そこに「信じない」可能性は内包されない。世界とかそんな言葉は無縁で、まずなにもない空間に「自分」とその「もの」がある。その原風景のうえに無数の存在が折り重なっているような状態が本当の意味での「信じる」だと思う。比較の対象もなくまずそれは「あり」、まずそれは「正しく」、そしてそれを見る人の心に一点の曇りもなく、なんの欺瞞もない。必然的にあらゆる事物すべてが恩寵であるような世界にその人が住んでいるとしたら、それはおそらく最大の幸福であると思う。
 俺はキリスト教とかよくわからんのですが、もし神を信じる人の心に、かけらでもこのような心性が備わっているのだとしたら、それは素晴らしいことのように思えます。まず「無の地平」のような場所に神が立っていて、その反対側に人が立っているような世界があるのだとしたら、そして神を信じる人がその地平を目指しているのだとしたら、宗教も悪くないなあとか思います。その段階では信じるとかそんなんではなく、ただ感謝しかないようにも思えるけど。


 さて。店舗研修の一日目が終了。俺は完全に疲労困憊。まゆみさんも鳳も完全に疲れきって帰宅です。新店のオープンということで、本部のトレーニング専門の人がやってきて、バイトに対する初日の研修をしてくれるわけです。本来俺としては、本部の人にいっさい頼らず自力だけでバイトの教育をしていきたいと考えていたのですが、事前に俺ら自身がその人から研修を受けた際に「この人は信用できる」という感触を抱いたため、その技量を盗むという目的もあり、やってもらったわけです。
 そしてその人の方法をまねて、今度は俺が研修を施すわけですが、俺には俺でいままでの十年間以上の店長経験で培った方法論があるわけで、それを捨てて他人の方法論に乗っかってやるのはなかなか厳しいものがありました。そんでもまー、あえてそれでやったわけなんですけど。
 トレーニング専門の人の研修方法はなかなか参考になりました。俺自身のやりかたとは絶対に相容れない部分もあるんですが、それでも「いかにしてバイトに大きな声を出させるか」とかいう点など、ずいぶんと教えられた部分も大きかった。
 今回、店を一店開くまで、本部の人たちにはいろいろお世話になってるわけですが、その仕事熱心さには頭が下がる思いです。今回の場合、俺が経験者ですし、本部の助けがなくても自力でどうにかできてしまう部分はかなり大きかったりします。が、それを承知のうえで、彼らは俺の自主性を尊重しながらも、的確なアドバイスと、オーナーとしての経験不足の部分に対するサポートをしてくれます。睡眠時間を削って働いてくれている。それはもちろん、やる気のあるオーナーと、最初から経験者が三人いるという恵まれた状況、そして本部の人たちへの感謝を忘れない俺らの姿勢がものをいっている部分も大きいでしょうが、やはり「ここにいい店を作りたい」という仕事に対する情熱が重要なんでしょう。彼らは「いい店を作ってくれそうだ」という保証されていない未来に労働力を投資してくれているのだと思う。
 そのことは、いい店を実際に作ることでしか返済できない負債です。それは確かにプレッシャーではありますが、もちろん不快なプレッシャーではありえません。
 まあ、それにしても本当によくやってくれると思う。


 ちなみに今日、まゆみさんは、昨日横浜で終えられなかった用事のために、一人で電車に乗っておつかいに行きました。まゆみさん、一人で電車乗ったのって、いったい何年ぶりなんだろう。俺と結婚してからは一度もなかったような気がするんだけど…。


 さて、明日はいよいよ商品の搬入です。店がその本来の姿を少しずつ整え始めるわけです。楽しみですね。
 あとこのクソ忙しい状況で、睡眠時間削ってまで日記書いてると、あまのさんが前に言ってたこと思い出します。確かに書きたくなるんだ、これが。いいにつけ悪いにつけ、テンションは高い状況だってことでしょうね。そして睡眠時間削って本の感想なんか書いてたりするわけですよ。



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